プロジェクトリーダーに欠かせない「推進力」とは?
目まぐるしい環境の変化に即応できる組織づくりが、企業の競争優位性確保に欠かせません。そして、多くの企業が情報システムやDX推進の機敏性の向上を目指し「システム内製化」を進めており、若手社員をプロジェクトリーダー(以下、PL)に任命するケースが増えています。しかし、プロジェクトをうまく進められず、頭を抱えているPLが多いのではないでしょうか?
本ページでは、プロジェクトを成功に導くPLの「推進力」について分かりやすく解説します。
プロジェクトリーダーに求められる推進力の磨き方
プロジェクト管理だけがPLの役割ではない
プロジェクトとは「定めた期日までに、限られた予算内で、特定の目的・目標を達成するための計画や業務」のことです。そして、PLはQCDを計画通りに終わらせる役割を担います。そこで、プロジェクト活動を定量的に可視化するPMBOK※1などの管理技法を用いてプロジェクト管理を行うことが一般的です。
しかし、システム開発やDXのプロジェクトは難易度・規模・納期・予算・プロジェクトメンバーなどの条件が毎回異なるため、PLには状況の的確な把握と、適切な決断・対処が求められます。くわえて、プロジェクトに関わるステークホルダーやエンドユーザーとの交渉・調整だけでなく、プロジェクトメンバーを指導・統率しプロジェクトを推進させることもPLの重要な役割です。
※1 PMBOK:Project Management Body Of Knowledge
プロジェクト管理力と推進力
PLには、プロジェクトを「管理する能力」と「推進する能力」の2つが求められます。プロジェクト管理力は、PMBOKやCMMIなどのプロジェクト管理技法の習得、プロジェクト管理ツールの活用によって強化することができる能力です。しかし、管理技法・管理ツールを用いたからといって、プロジェクトが必ずしも成功するとは限りません。
計画通りにプロジェクトを推進するためには、PLはプロジェクトを良い状態に維持し続けなければなりません。しかし、プロジェクトの状況は常に変化し、悪い状況に陥るときもあります。PLはプロジェクト活動の定量的な情報(QCDの予実など)だけでなく、定性的な情報(メンバーの様子など)も踏まえながら、プロジェクトを推進する必要があります。
ポイント
- 状況を正しく認識すること
- 認識した結果に問題があった場合、対策を決断すること
- 決断した対策どおりに実行すること
プロジェクトを失敗させるPLと成功させるPLの違い
日経BP社の調査※2では、システム開発やDXプロジェクトの約半分が失敗していると報告されています。そして、プロジェクトを失敗させるPL、成功させるPLには以下のような特徴があることから、PLにはプロジェクト管理力だけでなく、コミュニケーション力や正しい状況認識ができる力が必要であるあると言えます。
プロジェクトを失敗させるPLの特徴
- プロジェクトをITベンダーに任せきり
- コミュニケーション不足
- 状況認識を都合よく変える
- プロジェクト計画が曖昧
プロジェクトを成功させるPLの特徴
- プロジェクト状況を適切に把握
- コミュニケーションが闊達に行える
- 正しい状況認識・決断ができる/li>
- 適切なプロジェクト計画を立案できる
※2 2008年JUAS調べ 2018年日経コンピュータ「 IT プロジェクト実態調査」
リーダーシップの強さとは
状況をありのままに認識する
PLには、周囲の意見や先入観に惑わされることなく、状況をありのままに認識する強さが求められます。プロジェクトの状況が悪くなるときには、必ず兆候が表れます。 しかし、PLがその兆候に気づかない、または状況認識を誤り「認識のズレ」を生じさせてしまうことがあります。そして、「認識のズレ」は、以下の理由で生じます。
- 嘘をつく
例:プロジェクトメンバーが、怒られたくない心理から虚偽の進捗報告を行う - 見たいように見る
例:品質の問題を認識しているにも関わらず、そのうち改善されると考えてしまう - 感受性が鈍っている
例:プロジェクトメンバーが声なきSOSを出しているにも関わらずくみ取れない
非を認める勇気と決断・実行
プロジェクトがトラブル状況にあると認識した先には、更なる強さが求められます。 その理由は、システム開発やDXプロジェクトのトラブルの多くが“人”に起因しているからです。したがって、“人”との対決や葛藤は避けることができません。 まずは、トラブルを招いた自分の非を認める勇気が必要です。そして、PLが先頭に立って、トラブルの芽(人)と対峙し、その排除を決断・実行する強さが求められます。
正常時の強さ、異常時の強さ
PLが発揮すべきリーダーシップは、プロジェクトの正常時と、異常時(トラブル状況)で異なります。
- 正常時
メンバーのリーダーシップを引き出し、正常な状態を維持し続けるために先を読み、トラブルの芽を事前に摘み取り続ける - 異常時
PLが先頭に立ち、プロジェクト推進を阻害する事象を排除し、トラブルが収束するまで、決断と実行を繰り返し続ける
プロジェクトリーダーに求められる能力の磨き方
DX人材の育成事業を手掛ける㈱リンプレス※3では、プロジェクトリーダーに求められる能力を「管理力=アビリティ(Ability)」「推進力=コンピテンス(Compitence)」と表現しています。そして、その能力の磨き方や身につけ方は、それぞれ異なります。
アビリティは勉強や練習、書籍などを通じて一定の能力を身につけることができます。コンピテンスも同様に書籍などから手順や方法を学習することはできますが、実際にそれがPLとして状況に相応しい言動であるかは実行してみないと分かりません。つまり、コンピテンスは自分一人で学べるものではなく、実践の場での機会を活かし、経験を積むことで身につき研鑽することができる能力なのです。実践経験の他、体験学習やケースメソッド※4形式の研修を通じた研鑽も有効です。
※3 株式会社リンプレス(リンクレア100%子会社)
※4 実際にあった事例の疑似体験を通して、解決策を導き出す教育手法
まとめ
約半分が失敗すると言われているシステム開発・DXプロジェクトですが、プロジェクト管理力や推進力、リーダーシップやコミュニケーション力などをバランスよく身につけることで、プロジェクトを円滑に進められるようになります。つまり、管理力(アビリティ)の研鑽と、実践の場に身をおき積極的な行動で推進力(コンピテンス)を磨いていくことが重要です。
世の中にあるプロジェクトマネジメント研修の多くが、管理力(アビリティ)の強化が目的であるのに対し、実際のプロジェクトで求められる能力の大半は推進力(コンピテンス)です。㈱リンプレスでは推進力(コンピテンス)強化に着目した研修を提供しています。
また添付資料では、より詳しい推進力(コンピテンス)の磨き方と研修をご紹介しています。
是非、ご一読ください。
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※本ページは 株式会社リンプレス(リンクレア100%子会社)のブログを参考に執筆しています。
・プロジェクトリーダーが発揮すべきリーダーシップとは? そしてその“強さ”とは?
・DX推進に必要な「プロジェクトマネジメントスキル」とは何か?どのように身につけるか?